古い焙煎豆で淹れたコーヒーは酸っぱい、という噂は嘘

2015/4  

珈琲業界、どのサイトを見ても「古い焙煎豆は腐敗臭の様な嫌な酸味を感じさせる」ようなことが書かれていますが、僕の経験上、数カ月経過した珈琲焙煎豆を飲んでも嫌な酸味というものを感じたことがない。相当前から違和感を感じていましたが、今回明確に実験をしてみます。もしかすると業界の中においては、そう言わないといけない「しきたり」があるのかもしれない。僕は珈琲の業界の人ではないので、本当のことを書きますよ。

<結論>
コーヒー焙煎豆が古くなっても、強く嫌な酸味を生じることはなさそうでさる。
同じブレンドコーヒーの「焙煎5カ月目」と「焙煎3日目」の豆を用意し、同じ条件で飲み比べたところ、古い豆では「甘みが減り、こってり感が増した」感じをはっきり感じたが、題目の強く嫌な酸味は感じられなかった。もしかすると他の豆で試した場合、甘みが激減した分、酸味を相対的に強く感じる可能性はあるかもしれないが、今回の実験では、そういう感じは全くなかった。苦味などその他の風味の変化まで判別できなかった。おいしさでいえば、圧倒的に3日物の方が「甘みがあって、さらっとしていて」おいしかった。

<古い焙煎豆の本当の特長>
開封の際の香りが弱い。豆を挽くとき明らかな硬さを感じる。風味は、甘みが激減し、こってり感が出る。

<コーヒーが嫌に酸っぱい本当の理由>
@焙煎豆が生焼け。中まで火が通っていないんです。焙煎の失敗です。お豆さんが結構いい色に焼けているのにすっぱいならこの理由。かといってお店に「失敗しちゃいました?」って聞いても「うちはそういう味です」というでしょう。そういうお店は、同じ商品を買うたび、味が違うはずです。仕方がないので、そういうお豆を手に入れてしまったら、フライパンで煎ってください。極弱火で3分も煎ると「パチパチ」鳴り始め、そこから5分も煎ればおいしく飲めると思います。ただし、いい炒め具合に到達したらドライヤーなどで即効冷まさないと、余熱で焙煎は進みますので注意。1度失敗すれば感じは分かります。最善は、そんな店で買わなきゃいい。
A挽き具合が荒過ぎ。ドリップした時、泡が「真っ白」で、その上にコーヒー粉でなく「粒」が浮かんできたら、それは粗すぎるんじゃないでしょうか。それが好みならいいんです。でも、ここまで荒くすると粉の表面積が減り濾過時間も相当短くなり苦味が出せません。酸味が最も早く抽出されますので、相対的にすっぱいコーヒーに仕上がりますが、@の生焼けほどの酸っぱさはでません。僕はカリタの手動ミルを愛用していますが、ネジ式の留め具1山で、風味は結構変わります。1山を馬鹿にしてはいけません。
Bそういう味付けなんです。お豆さんの焼き色は薄いと思います。深煎とか中煎の表記は、生産者の感覚です。例えば、ドトールの中煎は、僕の中では浅煎です。ちょっと酸っぱすぎて飲めませんが、そういう味付けなんです。おそらくスーパーで売っているお豆も酸っぱめが多く、それが世間の平均的な好みなんでしょう。こんな時にも、@の時同様、フライパンで煎ってみます。おいしくなります。

<酸味と胃もたれの誤解>
「焙煎豆が古くなると油分が酸化することで酸っぱさを生じ、それを飲むと胃もたれを起こす」という噂があります。
まず古くなると酸っぱくなることに関して、「サラダ油」「オリーブオイル」が古くなっても酸っぱくならないことから冷静に考えればその理屈が間違いであることがわかるはず。そもそも酸化という現象は、ある物質が酸素と結び付くだけのことですから、酸味に関わる成分は増えませんので、酸っぱくなりようがありません。酸っぱくなるとしたら腐敗ですが、今回の実験に使ったお豆は、終日22℃(±1℃)に管理された部屋に5ヶ月間放置したものですが、腐敗の形跡は感じられませんでしたので、焙煎したコーヒー豆が、そう簡単に腐敗するということもなさそうです。よって、焙煎豆が古くなると酸味が増すということは、起こりようがありません。
次に胃もたれに関してですが、「古い油での揚げ物で胃もたれした経験」でそういった噂になったんでしょうが、ペーパードリップにおいては、油は濾過されません。仮に酸化油が胃もたれの元だとしても、少なくともペーパードリップではコーヒーの油が胃もたれを引き起こすことは不可能です。しかも、下の実験で5カ月物のコーヒーを飲みましたが、全く胃もたれはしませんでした。僕は「浅煎りの酸っぱいコーヒー」で胃もたれを起こします。コーヒーで胃もたれを起こした経験のある方は、単に浅煎りの酸っぱいコーヒーで胃もたれを感じたのだと思います。
最近では「酸敗」というナウい表現もみられるようになってきましたが、どうしてそこまでして、「古くなったコーヒー豆は酸っぱい」という観念を消費者に植え付けたいのでしょう。誰の得なんでしょう。「古くなったお豆は風味が落ちるからおいしくないよ。早く消費して買いに来てね。」で販売促進は十分です。とにかく、コーヒー豆は古くなっても酸っぱくならないし、胃もたれもしませんから。

<実験の詳細>
●設定

実験日2015/4/17。近所の豆屋さん秋元珈琲焙煎所の「tasogare」ブレンドを使用。
このお豆をチョイスしたことに理由は、同じブレンドで、古い豆と新しい豆が手元にあったから。
写真左は、1014/12/18焙煎のものを22℃±1℃に管理された部屋に5ヶ月間放置したもの。右は試供品で頂いたもので2015/4/14焙煎のもの。
数時間室温にさらし、豆の温度を等しくする。25gを用意し、中挽きにする。90℃のお湯で150mlとる。
ちょっと濃いめにして酸味を感じやすくしました。

●実験の記録
○開封。5ヶ月目のお豆さんの袋を開封するも、3日目のお豆さんに比べ広がる香りは弱い。
○挽く。5カ月ものは、豆が硬くなっている。挽くとき力がいる。
○さっそく湯を注ぐ。
左は5カ月物。右が3日物。下の写真はむらしている状態ですが、「もっこり」具合が全然違う。5カ月物は全然膨らまないが、3日物は超元気。
余談ですが、「焙煎したてです」と言われて買ってきたものの、この5カ月物のもっこり具合にしかならないお豆さんありませんでしたか?きっとそのお店の「焙煎したて」の感覚は数カ月なんですよね。

下写真も、左は5カ月物。右は3日物。写真では伝わりにくいですが、3日物の泡はあふれそうになります。


○飲んだ感想。
感想は、5カ月物は、決して強くはすっぱくない。商品本来の飲みなれた酸味は感じるが、嫌で強い酸味はない。甘さが激減し、珈琲液がドロドロしている。こってりしている。3日物は、いつも飲みなれた味が結構濃い感じだけれど、甘く、ちょっと酸味が感じられ、幸せ。
○ランダム化比較。明らかに味が違うけど、念のため気のせいかもしれないからランダム化比較。
「第三者は僕に知らせずにコップにどちらかを注ぐ。→僕、飲み当てる。」のランダム化比較実験を6回行ったところ。
全問正解。偶然全問正解してしまう確率64分の1。強い酸味がないことを客観的に主張できないが、これにより味の違いの判別ができていることを証明する。

<こっそり余談>
本実験で、古い豆でいれたコーヒーはドロドロこってりするということを発見しました。至極のカフェオレ開発に利用できるかもしれない。焙煎豆をあえて数カ月寝かせて、ミルクと混ぜると、よりこってり濃厚なカフェオレに仕上がるかもしれない♪♪♪

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(C) 2015 後藤珈琲研究所